鉄道写真と飛行機写真の撮影紀

2016年の表紙写真集

2016年1月の表紙

鉄路の守り神に最敬礼

容赦なく降り続く雪が、線路を真っ白に染めていく。辺りは静かそのもので、何かが近づいてくる気配すらしない。やがて、ブルっと空気が身震いしたかと思うと、カーブの向こうからそれは姿を現した。雪を全身にまといながら、鉄路の守り神は轟然と駆けていった。 2016年2月の表紙

舞う粉雪に想いを馳せて

濃密な粉雪が断続的に降り続く。踏切が鳴り出したから、列車が接近していることは間違いない。ほとんど水墨画のような真っ白な世界が広がるファインダー越しに、S字カーブの向こうから列車が姿を現すのを今か今かと想いを馳せる。……来た! 2016年3月の表紙

春の香りに包まれて

小さな駅で降り立って、目の前に広がる菜の花畑を目指す。見れば目の前には真っ黄色の世界。目を閉じれば濃密な菜の花特有のにおい。待ちに待った春の香りに包まれて、巡る季節を想う。今年も、希望に満ちた春が来た。 2016年4月の表紙

桜のトンネルくぐって

ウグイスのさえずりが聞こえる。さわやかな風が吹き抜ける。絶好のお花見日和。のどかな山間の小駅では満開の桜並木が迎えてくれた。やがてやってきた列車は、春の空気を思い切り感じるかのように、うれしそうに桜のトンネルをくぐっていった。 2016年5月の表紙

忘れじの萌える鉄路を

政治に翻ろうされ、何度も工事が中断してきた八ッ場ダムも、ついに本格的な工事が始まった。吾妻渓谷を走る吾妻線の線路もダムに沈む。最後の新緑の季節にようやく行くことができた。忘れないよ。この場所に線路があったことを。萌える鉄路に心が打ち震えたことを。 2016年6月の表紙

緑の中のみどりの電車

鉄道ファンの間では不評なことこの上ない、JR西日本の単色化プロジェクト。昔の地域鉄道部それぞれにいろいろな塗色があった頃はよかったと思わせる味気なさだが、こと、ここ山陰を走る緑一色の電車は、背景の山に溶け込み、それなりに合っている気がした。 2016年7月の表紙

波間にわたる南風

美しく晴れ上がった空の下、磯づたいに線路を遠望できるポイントまで行くことができた。暑いことで有名な高知県黒潮町だから、その猛烈な日差しと照り返しは容赦がない。でも、時おり波間をわたってくる南風に助けられて、列車を心地よく待つことができた。 2016年8月の表紙

清らかに、高原の涼風を

信濃大町から白馬へと抜ける高原地帯にある木崎湖。湖のほとりにある遊歩道から列車を撮影する。湖面に波はなく、どこまでも静かだ。木々も、湖面も、鮮やかなみどりに包まれる中を、高原地帯にふさわしいスカイブルーの車体が駆けてきた。 2016年9月の表紙

新米を頬張りながら待つ列車

筑前岩屋駅の構内の出店に、地元で穫れた新米で作られたおにぎりが売っていた。次の列車まで1時間。素晴らしい秋空の下、歴史を感じさせるアーチ橋のたもとで、黄金に実った稲穂を眺め、おにぎりを頬張りながら列車を待つ。この上ない幸せのひと時だった。 2016年10月の表紙

山里に、秋風抜けて

S字カーブを見下ろす高台に上がる。ひなびた、日本の原風景ともいうべき光景がそこに広がっていた。タタン・タタンと軽やかな音を立てて列車がやってくると、線路の傍らで穂を出したススキが風に揺れた。秋風が抜けるように、列車は山里を巡っていく。 2016年11月の表紙

ようこそ、きらめきの国へ

甲子道路を抜けると景色は一変した。南会津の山々は美しく色づき、空気は一気に涼しくなった。日本唯一の茅葺き屋根を持つ湯野上温泉駅に着くと、ちょうど列車がやってきた。野口英世が「ようこそ」と、きらめきの国にやってきたぼくたちに手を振った。 2016年12月の表紙

サヨナラよりも、ありがとう

もう二度と来ることはできないかも知れない。留萌への距離を考えれば仕方のないことだ。だからこそ大切に、そして丁寧に撮ろう。結果的にこれが「サヨナラ」になってしまっても、この日こうして出逢えたことに、心の底から「ありがとう」って言いたいじゃないか。